Rules Guide• 対象: 🇯🇵 日本企業 •更新: 2026-10-07

税金・源泉徴収の基礎 海外在住のエンジニアに報酬を払うとき、日本の会社は何を確認すればよいか

このページの決定ゴール: 所得税法第161条(国外源泉所得)に基づく日本側源泉徴収0%の適法要件と、会社が保管すべき3大税務証憑を確定します。

海外のエンジニアに報酬を払うとき、「日本で源泉徴収が必要か」は最初に出てくる疑問です。結論から言うと、役務が日本の外で行われる場合、日本の源泉徴収は原則として不要です。ただし、前提条件がいくつかあります。このページは、その前提と確認ポイントを整理します。

30秒結論:税務・源泉徴収の判断基準

海外在住者が現地で作業する場合、日本の源泉徴収は0%(不要)。契約書に「全役務の提供場所は日本国外」と明記することが必須要件

01. 日本源泉税 0%

所得税法第161条(国外源泉所得)により、日本での源泉徴収および支払調書の提出は原則不要。

02. 現地側の納税義務

現地の税金(フィリピンBIR、ベトナムPIT、インドGST)は相手方本人が自己申告・納税。

03. 必須の保存書類

税務調査対策として「業務委託基本契約書」「相手方のインボイス」「Wise送金受領証」の3点を保管。

このページは一般的な整理です税の扱いは契約内容・働く場所・相手の居住地で変わります。実際の判断は、税理士または会計士に確認してください。

① 日本の源泉徴収:どんなときに必要か

日本の源泉徴収は、日本の会社が「国内源泉所得」を非居住者に払うときに必要になります。海外在住のエンジニアが、日本の外で作業して受け取る報酬は、一般に国内源泉所得にあたらないため、源泉徴収は求められません。

ケース日本の源泉徴収考え方
海外在住の人が、自国で作業して報酬を受け取る原則不要国外で行う役務で、国内源泉所得にあたらない
業務委託の人が、日本に来て日本国内で作業する必要になる場合あり国内で行う役務は国内源泉所得になり得る
日本在住の人(外国籍を含む)に業務委託する別のルール居住者への支払いは、報酬の内容により源泉の要否が決まる
EOR経由で雇用する日本側は不要が一般的現地の給与の源泉と社会保険はEORが処理する
契約書でやっておくこと「役務は全て〇〇国内で提供される」ことを契約書に書いておきます。一時的に来日して作業する場合は、その期間の扱いを事前に税理士に確認してください。

② 消費税・インボイス

海外で行われる役務の提供は、日本の消費税の対象外の取引(国外取引)になるのが一般的です。海外のエンジニアは日本のインボイス登録をしていませんが、国外取引は課税仕入れにならないため、仕入税額控除の問題は通常生じません。ただし、請求元が海外の事業者(EORプラットフォームなど)の場合は、サービスの中身で扱いが変わることがあるため、会計担当と確認してください。

③ 恒久的施設(PE)の考え方

海外の個人に仕事を依頼しているだけなら、通常はその国で日本の会社の恒久的施設(PE)があるとは見なされません。ただし、次のような場合は注意が必要です。

  • 現地の人が、日本の会社の名前で契約を結ぶ権限を持ち、継続的に行使している
  • 日本の会社が、現地に拠点(オフィス)や常駐の管理者を置いている
  • 現地の人に、事業の中核的な意思決定や営業活動を任せている

開発業務のみを依頼する範囲であれば、PEのリスクは低い一方、現地に管理職を置く、営業を任せるなど役割が広がるときは事前に相談してください。

④ 現地での納税は誰が行うか

業務委託の場合、現地での所得税や付加価値税などの申告・納付は、原則として相手本人(個人事業主)の責任です。会社が代わりに納付する必要はありませんが、契約書に「本人が自国の税務を自己責任で処理する」ことを書き、必要に応じて登録番号や納税の状況を確認します。

国本人側で気をつける点(例)
🇵🇭 フィリピン個人事業主としての税務登録(BIR)と、所得税の申告方法の選択
🇻🇳 ベトナム個人所得税の申告。報酬の受け取り方や社会保険の扱いは雇用形態で変わる
🇮🇳 インド売上が一定額(年間200万INR程度)を超えると付加価値税(GST)の登録が必要になる場合がある

各国の制度と基準額は改定されることがあります。最新の内容は現地の専門家や公的機関で確認してください。

⑤ 「委託」のつもりが「雇用」と見られるリスク

業務委託の契約でも、勤務時間を細かく決め、仕事の進め方まで細かく指示し、他の仕事を断らせるような実態があると、現地の法律で「雇用」と判断されることがあります(誤分類)。その場合、未払いの社会保険や退職金の請求につながるおそれがあります。

  • 成果物や期間で依頼し、時間や手順の管理は相手に任せる
  • 他の案件を受けることを禁止しない(独占契約にしない)
  • 長期・専属の働き方にする場合は、EORでの雇用を検討する

実務で直面する3大税務落とし穴と事前回避策

1

一時来日時の作業(国内源泉税20.42%)

海外エンジニアを日本本社に招いてオフサイトミーティングや共同開発を行った場合、その期間中に日本国内で遂行した役務は「国内源泉所得」となり、日本側で20.42%の源泉徴収義務が発生します。来日期間の報酬区分をあらかじめ社内規程で整理しておく必要があります。

2

恒久的施設(PE)認定による現地法人税

現地のシニアエンジニアに「日本本社の名義で契約を締結する権限(契約締結代理人)」を与えたり、現地に常設オフィスを構えた場合、現地当局からPE(恒久的施設)と認定され、日本本社の所得の一部が現地で課税される恐れがあります。

3

偽装請負認定と未払い社会保険の遡及追徴

業務委託契約でありながら、勤務時間のタイムカード管理や専属拘束を行うと、現地労働局から実質雇用と認定されます。契約解除時に数年分の未払い法定福利費や解雇手当(Severance)を一括請求されるリスクがあります。

ネクストアクション:税務コンプライアンスを整える3つの実務ステップ
STEP 01

「国外役務提供」条項の契約書記載

英文契約書に「全役務は日本国外において提供される」旨を明記し、日本の源泉税0%の根拠書類とする。

STEP 02

相手方納税番号(TIN/PAN)の回収

エンジニアから居住地住所・英文氏名・現地納税番号が入ったインボイスを毎月受領するフローを確立。

STEP 03

3点証憑(契約書・請求書・送金証)の保管

税務調査時に外注費計上を立証できるよう、契約書・請求書・Wise受領証をPDFで一括フォルダ保管。

送金に関する手続き

海外への支払いが1回で3,000万円相当を超える場合は、外為法に基づく支払等報告書が必要になることがあります。通常の月額報酬ではほぼ該当しませんが、まとめ払いをするときは確認してください。送金の手数料や為替のコストは 海外送金の手数料比較 を参照してください。

よくある質問

海外在住のエンジニアに払う報酬に、日本の源泉徴収は必要ですか?
海外で作業して受け取る報酬は、原則として必要ありません。日本国内で作業する期間がある場合は、その分の扱いを税理士に確認してください。
日印・日比・日越の租税条約は関係しますか?
主に、現地側でその国の人が日本の会社から報酬を受けるときの二重課税の調整に関わります。業務委託で国外役務の場合、日本側の源泉徴収が不要になる点とは別の論点です。
支払調書や契約書は何を保存しておけばよいですか?
契約書、請求書、送金の記録を保存します。経費(外注費)として計上するための証憑になります。保存期間は税理士に確認してください。
次の意思決定に進む (Next Action)

税務ルールを確認したら、送金口座と契約書の準備へ

源泉徴収0%の要件(国外での役務提供)を英文契約書に明記し、低コストで送金証明書が得られる送金インフラを整えましょう。

確認した情報源
  • 所得税法 第161条(国内源泉所得)・第212条(源泉徴収義務)
  • 国税庁 タックスアンサー(非居住者等に支払う報酬の源泉徴収)
  • 外国為替及び外国貿易法(支払等報告書)
  • 各国の個人事業者の登録・納税制度(フィリピンBIR、インドGST等)の公開情報

最終確認日: 2026-10-07。法律・税率・為替は変わるため、契約や納税の前に現地の専門家または公的機関で再確認してください。