Cost Guide• 対象: 🇯🇵 日本企業 •更新: 2026-10-07

採用・EOR月額費用の総額 「給与+α」のαは何か。業務委託とEORで、シニアエンジニア1人あたりの月額総額を試算する

このページの決定ゴール: 「基本給 × 1.01倍(業務委託)」vs「基本給 × 1.4〜1.6倍(正社員EOR)」の構造を把握し、社内稟議用の総予算を確定させます。

海外採用の予算を組むとき、給与だけを見ていると見積りが外れます。雇い方によって、同じ給与でも会社が払う総額は大きく変わります。このページでは、シニアエンジニア1人あたりの月額総額を「業務委託」と「EOR」に分けて試算します。

30秒結論:月額総費用(TCO)の目安

業務委託なら「基本給+送金手数料約1%」、EORなら「基本給+法定福利(18〜32%)+EOR手数料(月$459〜$599)」で基本給の約1.3〜1.4倍が実効総額

01. 業務委託(リーン運用)

基本給30万円なら月額約30万〜31万円。プラットフォーム固定費ゼロ、Wise送金のみで最も低コスト。

02. EOR正社員(法令遵守)

基本給30万円なら月額約42万〜45万円。法定保険・13ヶ月給与・月額シート費用が上乗せ。

03. 初期デポジット(預託金)

EOR利用時は初月に「総人件費1〜2ヶ月分(約50万〜100万円/人)」の保証金キャッシュロックが発生。

月額総額を構成する5つの項目

項目業務委託EOR(雇用代行)
① 基本給(報酬)○○
② 法定福利費(会社負担の社会保険など)原則なし(本人が自己負担)○ 国ごとに決まる
③ ボーナス・13ヶ月給与契約次第国の制度や慣習に従う
④ EOR手数料なし月額$400〜600程度(約6〜9万円)
⑤ 送金・為替手数料○(約0.5〜1%)請求書に含まれる

業務委託でもコントラクター用の支払いプラットフォームを使う場合は月額数千円〜の利用料がかかります(例: Deel、Remoteは月額$29〜)。

試算:シニアエンジニア1人あたりの月額総額

🇵🇭 フィリピン🇻🇳 ベトナム🇮🇳 インド
想定する基本給12万PHP
≒31.8万円
4,500万VND
≒27.3万円
32万INR
≒58.2万円
業務委託の総額約34万円約29万円約62万円
EORの法定福利費約1.7万円
(上限があるため小さい)
約6.4万円
(23.5%)
約11.6万円
(約20%の想定)
EORのボーナス相当(月割り)約2.7万円
(13ヶ月給与は法定)
約2.3万円
(テト賞与は慣習)
—
EOR手数料(月額)約6〜9万円約6〜9万円約6〜9万円
EORの総額約42〜45万円約42〜45万円約76〜79万円

業務委託は「基本給+PC・通信などの手当バッファ約5%+送金手数料約1%」で計算。EORは「基本給+法定福利費+ボーナス月割り+EOR手数料」で計算。ベトナムのボーナスは基本給1ヶ月分、インドは別途ボーナス制度がある場合は加算してください。

この試算からわかることEORの手数料はほぼ一定額なので、給与が低いほど総額に占める割合が大きくなります。フィリピンやベトナムでは総額の約15〜20%を占めますが、インドでは約10%です。
また、フィリピンの社会保険は雇用主負担に上限があり、給与が上がっても負担額はあまり増えません。

国ごとの法定福利費(EORで必要になる会社負担)

🇵🇭 フィリピン

SSS(月給与クレジット上限3.5万PHPの10%)、PhilHealth(2.5%)、Pag-IBIG(2%、上限あり)の合計は、2026年時点の上限で月約6,230PHP。給与が高くても大きくは増えません。13ヶ月給与は大統領令851号で法定(毎年12月24日まで、年間基本給の1/12以上)。

🇻🇳 ベトナム

社会保険17.5%・医療保険3%・失業保険1%の合計21.5%に、労働組合費2%を加えた約23.5%が会社の負担です(賃金に応じた上限あり)。テト賞与と13ヶ月給与は法律上の義務ではなく、契約や社内規程に書けば拘束力が生じます。

🇮🇳 インド

従業員積立基金(EPF)の会社負担12%、退職一時金(Gratuity)の積立、医療保険などで、賃金の構成により約15〜25%の幅があります。2025年11月施行の新労働法で賃金の定義が見直され、積立の基礎が増える場合があります。

インドのGratuityについて勤続5年以上で受け取る退職一時金です。新労働法では、有期雇用の従業員は1年の勤務で比例的に受給資格が生じると定められました。EORの見積りで、積立の扱いを確認してください。

総費用見積もりにおける3大落とし穴と隠れコスト

1

保証預託金(デポジット)のキャッシュ拘束

EORプロバイダーは解雇手当や法定告知期間のリスク保全のため、初月に総支給額+法定福利費の1〜2ヶ月分を預託金として請求します。複数名採用時は数百万円の現金が契約終了まで拘束されるため資金計画に織り込みが必要です。

2

二重為替換算とFXスプレッドの上乗せ

日本円(JPY)で支払う場合でも、プラットフォーム内部でUSD→現地通貨(PHP/VND/INR)へ換算される過程で1〜2%の為替スプレッドが乗ることがあります。年間600万円の給与の場合、為替差損だけで年間6万〜12万円の不可視コストが生じます。

3

解雇予告手当・退職金パッケージの発生

現地正社員であるため、試用期間終了後や事業縮小による解約時には現地の労働法規に基づく解雇予告手当(Notice Pay)や退職一時金(Severance)が発生します。業務委託のような即日契約解除はできない点に注意が必要です。

ネクストアクション:総予算を確定させる3つの実務ステップ
STEP 01

候補者の希望給与のGross確認

候補者の提示額が「手取り(Net)」か「総支給額(Gross)」かを確認し、所得税込みのGross基本給を算出。

STEP 02

EOR候補2社から総額見積もり取得

DeelとRemote(またはMultiplier)に同条件で見積もりを依頼し、デポジット額と為替レート基準を比較。

STEP 03

10%為替バッファを含めた稟議起案

急な円安進行に備え、月額総人件費に5〜10%の為替変動予備費を積んで社内予算承認を進める。

月額には出てこない、立ち上げ時の費用

  • 採用費: 求人媒体、スカウト用サブスク(LinkedIn Recruiterなど)、人材紹介会社を使う場合は年収の15〜25%程度が目安です。
  • 契約・法務確認: 英文契約書(知財譲渡条項を含む)のレビュー費用。
  • 機器: PCは日本から送らず、手当を支給するか、EORの現地手配を使うと関税トラブルを避けられます。
  • マネジメントの時間: 時差や言語の違いによる調整の工数は、見積りに入りにくいコストです。

業務委託とEOR、どちらにするか

費用だけを見ると業務委託が安く見えますが、長期の中核メンバーや、勤務時間・指揮命令が強くなる働き方では、誤分類(実質は雇用なのに委託で契約している状態)のリスクが出てきます。まず業務委託で始めて、実績を見てEORに移す進め方も一般的です。

よくある質問

EORを使うと、なぜこんなに高くなるのですか?
現地の法人があなたの代わりに雇用主となるため、法定福利費(会社負担の社会保険など)と、事務・法務を担うEOR手数料が上乗せされるためです。その分、現地の法人設立や労務対応が不要になります。
業務委託のままでも問題ありませんか?
成果物に対して報酬を払い、働き方を相手に任せる形なら一般的です。勤務時間や手順を細かく指示する場合は、雇用と判断されるリスクがあるため、専門家に確認してください。
見積りの数字はどのくらい正確ですか?
上記は2026年10月時点の公開情報と目安レートによる概算です。実際の請求は、EOR事業者の見積りと現地の最新の料率で確認してください。
次の意思決定に進む (Next Action)

予算枠が固まったら、リアルタイムシミュレーションへ

自社の採用予定人数・国・職位を入力して月額総コストと東京採用との削減額を即座に試算しましょう。

確認した情報源
  • フィリピン: SSS・PhilHealth・Pag-IBIGの雇用主負担率と上限、大統領令851号(13ヶ月給与)
  • ベトナム: 社会保険・医療保険・失業保険の雇用主負担率(合計21.5%)と労働組合費(2%)
  • インド: 従業員積立基金(EPF)、退職一時金(Gratuity)、2025年11月施行の新労働法(賃金の定義)
  • EOR事業者の公開料金(Deel・Remote: 月額$599〜、Multiplier: $400〜)
  • 換算: 1 USD ≒ 150円、1 PHP ≒ 2.65円、1,000 VND ≒ 6.1円、1 INR ≒ 1.82円(目安)

最終確認日: 2026-10-07。法律・税率・為替は変わるため、契約や納税の前に現地の専門家または公的機関で再確認してください。